第13回【天候デリバティブ】

今回は、天候リスクによる企業収益の減少をヘッジする手段として利用が広がっている「天候デリバティブ」をご紹介します。

(1)天候デリバティブとは

天候デリバティブとは、企業が、気温や降水量、積雪量などの変動によって売り上げが減少するリスクを軽減するために、これらの気象条件が一定の水準を上回ったり下回ったりした場合に補償金を受け取れる金融派生商品(注)のことです。
もともと、1997 年に米国で開発されたものですが、日本でも99 年に損害保険会社が雪不足を懸念するスキー用品販売会社向けに開発して以来、多種多様な企業で利用されています。

(2)天候デリバティブの主な利用事業者

この保険の主な利用事業者は、エネルギー事業者(電力・ガス)/農業関連事業者/衣料関連事業者/飲料関連事業者/スキー・ゴルフ関連事業者等があげられます。また、ある総合商社では、直接天候リスクをもたない場合でも、仕入・販売顧客に対して、この保険を提供していることが確認されています。

(3)天候デリバティブのプライシング

◇一般的なプライシングの算出式
支払額の期待値+支払額の標準偏差×安全率(大凡0.3~0.4) ※安全率:リスク量を上乗した変数

◇期待値と標準偏差の基礎データ
①過去の観測地の入手 ②観測地のトレンド除去 ③気温時系列の生成 ④生成した気温時
系列に対する支払額の算出 ⑤その支払額の分布の平均と標準偏差の算出

(4)契約の事例:低温によって売上が減ってしまうケース

◇契約事例
契約事例

◇支払事例:観測期間中の日平均気温の平均値24.8℃→受取金額25℃-24.8℃=0.2℃=200万円
支払事例

(注)天候保険と天候デリバティブの違い
損害保険は実際の損失額を補うものなので、天候と損害との因果関係が明確になり損失額が確定しないと保険金が支払われません。これに対し、天候デリバティブは、あらかじめ設定した気象条件を満たせば、実際の被害の程度に関係なく、契約に基づいた補償金が支払われます。