今回は、テロリスクの概念と状況について、次回ではテロ保険についてレポートします。
【1】テロリスクとは
テロリスクの定義は非常に広範で、外務省webでも下記の通りとなっています。
“一般的には、「特定の主義主張に基づいて、国家などにその受け入れを強要したり、社会に恐怖を与える目的で殺傷・破壊行為(ハイジャック、誘拐、爆発物の設置など)を行ったりすること」を指します。”となっており、その攻撃主体も多種多様なのがテロリスクの特徴となります。
【2】テロリスクの状況
①世界テロ件数の推移
(参考資料:Terrorism Risk Insurance Report by Marsh)
上記の通り、毎年約2~2.5万件ほど世界で発生しています。地域は、中東以外、EU諸国や東南アジアでも頻発しています。また、レポートではテロの損害内容についても追記しています。
また、企業の観点からいえば、テロの損害としては、直接的損害の他も企業活動に重大な影響を及ぼすものとなっています。(Supply chain disruptionでは2016年は346回発生、16%増加(2015年比))
②テロの傾向
A:テロ実行犯の変化
昨今、欧米諸国のテロは、インターネット等の情報に感化され過激化した個人、またはテロ組織によるトレーニングを受けた個人が、自らの居住する国においてテロを行うHomegrown Terrorismの脅威が深刻化しています。Homegrown Terrorismの実行犯は、端緒が表面化しにくく、動向の把握が困難であり、テロとして把握・識別することが困難とされます。
B:テロのターゲットの変化
民間人や民間施設・車両はSoft Targetと呼ばれ、軍事施設や政府機関等Hard Targetと比べるとテロに対する警備や監視が手薄とされています。Broker調査では、欧米におけるSoft Targetトが全標的に占める割合は、2010~2014年にかけては25%であったが、2015年には31%と微増しており、標的のSoft Target化が進んでいる見方もあります。主なSoft Targetは交通機関、小売店、採掘場、インフラ施設、イベント会場等となっています。
③サイバーテロ
ここ数年、グローバルに展開する企業で特に注目されているリスクがサイバー攻撃によるテロリスクです。サイバー攻撃は、サイバー犯罪集団から国家レベルなど様々な主体によって日々、高度な攻撃が各企業に行われています。結果、厳重・最新のセキュリティシステムを運用していても完全な防御は不可能と言われています。
2017年もランサムウェア(WannaCryやNotPetya)により150ヶ国の企業が攻撃を受け、$300M以上の事業中断の大規模損害が発生しています。