2018年1月、仮想通貨の巨額流出事件が話題となりましたが、関係する保険の整備状況はどのようになっているのでしょうか。今回は仮想通貨向け保険について取り上げます。
1.現状
・まず、利用者が個人で加入できる保険は、2018年3月現在提供されていません。
・一方で、仮想通貨の交換事業者が加入できる保険は、開発・提供が進みつつあります。
・補償の種類は、大きく3つに分けることができます。
① 交換事業者へのサイバー攻撃等により、仮想通貨の盗難・消失が発生した場合の補償
② ネットワーク混雑等を原因とする送金不能により、加盟店に損失が発生した場合の補償
③ 利用者の個人アカウントに対する不正アクセスにより、仮想通貨の盗難・消失が発生した場合の補償
・補償内容は契約によって異なります。保険を手配している交換事業者であるからといって、上記3点がすべてカバーされるとは限りません。また、設定されている補償限度額が少額であれば、全体の損失を補償しきれない可能性もあります。
⇒交換事業者の付保判断や補償内容の選択如何により、もしもの場合の利用者・加盟店に対するプロテクションが大きく変わってきます。
2.主な課題
・保険会社が商品の開発や保険料の算定をする際、過去の実績が重要なファクターになります。
この点、新興産業の仮想通貨はデータの蓄積に乏しく、リスク判断が難しい分野といえます。
(そのような中で発生した1月の巨額流出事件は、保険会社の引受判断をより慎重にするものと予想されます。)
・大小さまざまな事業者が仮想通貨市場に参入しており、セキュリティやコンプライアンス体制の整備に資金を投入できない事業者も多く存在すると考えられます。 また、利用者側・加盟店側のセキュリティ状況も一様ではありません。よって、全体としてリスクの大きい産業と判断される可能性があります。
・ボラティリティが高く、損害額の予測がつきにくいことも大きなリスクといえます。
⇒リスクの大きい産業に対し、保険会社は保険引受に慎重になります。その影響は、事業者の負担する保険料に反映されてきます。結果、限定的な内容で付保したり、保険手配を断念する事業者も一定数現れるのではないでしょうか。
3.今後の可能性
・仮想通貨市場が拡大し、データの蓄積・保険料ファンドの積上げが進めば、保険会社としてもリスクをとりやすくなり、保険の引受が積極化する可能性があります。
・従来の保険の応用も考えられます。
ex1)サイバー保険の補償範囲に含める方法
ex2)交換事業者の従業員による横領等については、身元信用保険の補償範囲に含める方法